こんにちは、スッキリシリーズ著者の中山です。
10月1日から11月末まで開催中のスッキリわかるシリーズ10周年記念祭、調子にのって「週次で裏話紹介します!」なんていってしまったことを早くも後悔しはじめたところで、そういえば己が自他共に認める三日坊主であったことを思い出した今日この頃、皆様いかがおすごしでしょうか。
前回、調子に乗って「スッキリわかる入門シリーズの秘密」を熱く語りすぎて、どうやらプチ燃え尽き症候群に陥ったようです。
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スッキリスト秘話(2) 湊雄輔&朝香あゆみ 編
こんにちは、スッキリシリーズ著者のナカヤマです。 先週からはじまりましたスッキリわかるシリーズ10周年記念祭の裏で、編集長にバレないように副音声的キャラ裏話を毎週ご紹介するお時間がやってまいりました。 ...
しかーし! Amazonさんや楽天ブックスさんでポイント10%還元だけでなく、今この瞬間も、全国200店以上の書店様でもスッキリシリーズのために貴重な棚と書店員様の血と汗と涙と時間をかけて頂いていることを考えれば、これは弱音吐いている場合ではないな、と。
・・・あ、でも、当初予定していた岬くん&赤城さんではいまいちテンションあがらないので、しかたなく、番組予定を変更しまして、一部にコアなファンがいらっしゃるのこの方で参りましょう!
株式会社ミヤビリンク
データ技術本部
データインテグレーション部
PMO支援室
仮想企業ミヤビリンクの社員たち
スッキリシリーズのキャラたちは、仮想のIT企業「株式会社ミヤビリンク」に所属している設定になっています。この企業、なぜか無駄に公式Webサイトがあったり1、GitHubアカウントあったりしますが2、関西地方にある中規模のIT企業という設定です。
湊くんや菅原さんはもちろん、今回ご紹介のいずみさんもミヤビリンクの社員です。
『スッキリわかるSQL入門』の先生役として、同書冒頭で登場します。
この時点で、
- 立花いずみは、湊雄輔の実姉である(旧名:湊いずみである)こと
- ミヤビリンクはわりと縁故採用3もする企業であること
- 著者はおそらく、妹派ではなく姉派であること
など、いろんなことがわかりますね。
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だが、しかーし!
前回のセルフ情熱大陸「スッキリスト秘話(2)」を読破したあなたなら、勘付いたはずです。
いずみさんが湊くんの姉である理由
ここで、「あ、ひょっとしてあのイラストのためなんじゃ...!! (ピキーン!)」 とひらめいたあなたには、この場で「シルバースッキリスト」の称号を与えましょう4。
スッキリわかるSQL入門 第9章に登場する、この図、ですね。
サザエさん風の「オカンDBMSちゃん」に、お姉ちゃん→怒られる・弟→ざまぁ的な「長男長女・悲哀の図」を通して、デッドロックの解除機構を学ぶ重要なシーンです。
実際の稼働システムでは、よほど高負荷状態で多数の書き込みトランザクションが長時間集中するようなケースでないと、デッドロックはそうそう頻発するものでもありませんが、資格試験などではしっかり出ますし、ITエンジニアとしては知らないとちょっと恥ずかしい思いをする教養かなとも思います。
また、「元・火消し部隊」としては、この手の「テストが難しく、再現性が低く、めったに爆発しないくせに、爆発したらあちこちに連鎖するし、そのくせ最初どこで何が爆発したか一瞬わからないようなトラブルの種」というのは、かーなーり"やっかい"な印象を持っています。開発エンジニア・オペレーターともに頭の片隅に柔らかく留め置くことで、発生リスクや発生時の障害切り分け・問題判別速度に差がでるヤツですね。
そんなこんなで、「学習後はめったにリアル発生を見ることはないだろう」からこそ、ぜひSQL学習の機会に印象に残して頂きたく、「ちょっと微笑ましい姉弟」をイラストとして添えさせて頂きました。5
しかし... 残念ながら、この図は「姉弟」を使った決定的な理由ではありません。
ちょっぴりイタズラ好きな「お姉さん」
そもそも、この「立花いずみ」というキャラクター、スッキリシリーズ初の「女性の先生役」でした。「男性の先生役が続いたので女性も考えてみよう」と思ったのもありますが、中山の実経験上、プロジェクトで関わったDBAさんやDB関連の研修講師の方に偶然女性が多く、自然に生まれたキャラクターです。
当初から、菅原同様に(=大江とは違って)未経験者に手厚く、やさしく解説を進めるキャラクターとして設計しました。明るくさわやかな立ち回りに加え、マスコットキャラのDBMSちゃんもあいまって、堅く厳密なDBMSの世界への入門ながら、柔らかくとっつきやすい紙面構成に一役買ってくれたかなと思います。
しかーし!!
真のシルバースッキリストなあなたであれば、「スッキリわかるSQL入門」を通読して、お感じになってたはず。
このいずみさん、「あらあらうふふ」と穏やかな笑顔をふりまきつつも、希に、初心者を殺しにかかってることがある、ちょっと天然系のお姉さんであることを。
たとえば2章、SQL初心者あるあるの「DELETE FROM テーブル名;」 (WHERE句なし)を湊に提示しておいて——
と残念がってみたり。第10章では、外部キー制約がかかっていないことをいいことに、湊にいろいろ吹き込んでおいて、
コレですよ。
実弟に地雷原を歩かせながら、事故ったら「あらあらうふふ」ってもう、「さすが令和にDBAとしてIT企業にお勤めながら、なぜか紙帳簿で家計簿つけてる人は、ひと味もふた味も違いますな(褒め言葉)」としか思えないわけです。
真・いずみさんが湊くんの姉である理由
そしてこの「イタズラでバルスを学び手に唱えさせようとするいずみさんの行動」こそ、彼女を湊の姉としなければならなかった理由でした。
上記の「WHERE句なしDELETE文(=全データ吹き飛ばし)」や、「参照整合性破壊6」などは、本番でやったら(起きたら)関係者全員が真っ青になるでは済まされない操作です。頭でわかるというレベルではなく、感覚というか脊髄反射というか、もう「WHERE句がついてないDELETE文やUPDATE文が目に入った瞬間に、違和感や嫌な予感を感じたり、共感覚的に"SQL文が赤く見える"」ぐらいのレベルで自分の身に迫る危機を察知してほしい。
だからこそ、紙面上でもただ単に「WHERE句を付けないと、全行削除という意味になります。」というただの解説文で済ませたくはありませんでした。なるべく印象に残る方法で、実は「本当に危険な操作」を紹介するため、いずみさんにはちょっとイタズラっ子を演じさせた次第です。
実際、研修などでも同様の目的で「じゃぁ、このSQL実行して、みんなで一緒にテーブル吹き飛ばすぞー。準備はいいね? はい、せーのっ、バルス!」って声をかけ、受講者のみなさんに体験いただくことはよくあります7。
ただし、このデータ全削除をはじめとする「派手な失敗」や「恥ずかしい間違い」を、「だれか一人(または少数)の学び手」を講師が指名して、「あえてやらせるとき」には、特段の注意が必要です。
私たち「学び終えた人」からしたら、笑い話(研修の偽データを使った、ただのネタDELETE文の実行)に過ぎません。しかし、初めて学ぶ人の中には、そのSQLが本番で引き起こす「ことの重大性」の解説を聞いて、「とてつもなく危険な失敗を、自分が、他のみんなの前で、やってしまった....」と感じ、強い恥の感覚を抱いてしまったりする方が希にですがいらっしゃいます8。
結果、そのような失敗体験をした学び手が心を閉ざしてしまったり、それを感じた周囲の学び手も「少し暗い心持ち」になったりするなど、導き手の声が学び手に届きづらい関係となってしまうことがありるわけです。9
だからこそ、『スッキリわかるSQL入門』においても、いずみの誘導で「失敗」する役回りの湊は、「いずみとの間で長期に渡る信頼関係が構築されていることが自明であり、解説途中のイタズラが、学び手(湊・朝香)の主観的にも、読み手からの客観的にも、真に悪意あるものではないと受け取ってもらいやすい立場」である必要があった、というわけでした。
失敗は成功の母、というけれど
「失敗は成功の母」といいますし、実際、失敗しなければ学べないこと(学んだつもりになっても表面的でしかないこと)は多く、ときに「軽い失敗を体験する」ことが有用・必要なときも、人生にはあるでしょう。10
でもやっぱ、「失敗」すると痛いし、「失敗」するのは怖いです。
「転ばないと自転車には乗れるようになれないよ」って言われて、それは頭ではわかってるんですが、いざ転んで膝とかすりむいて血とかにじむと、やっぱちょぴっと涙でちゃうし、補助輪が恋しくなっちゃうんですよ。さらにそんな姿を、ちょっと気になってるあの子に偶然見られちゃったら、恥ずかしくて、悔しくて、またちょっと涙でちゃうんです。人間だもの。
だからこそ、私たちプロのIT指導者は、本人にとって「ほどよい失敗」を設計したうえで、それを体験してもらえるよう工夫をあれこれするわけですが、同様の工夫を「スッキリわかる入門シリーズ」各書には盛り込んだつもりです。
湊くんや朝香さんなどのキャラクターが、読者の皆さんにかわって(または、一緒に)、いろんな「あるある失敗」をしながら学び進める「スッキリわかる入門シリーズ」。ちょっとかわったIT入門書ですが、学びのお供にしていただけましたら幸いです。
最後までお読みいただいた皆様へのお礼
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次回スッキリスト秘話「大江岳人 編」は、10月22日公開予定です致しました。
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スッキリスト秘話(4) 大江岳人 編
こんにちは、スッキリシリーズ著者の中山です。 10月〜11月の2ヶ月間にわたり開催されております、スッキリわかるシリーズ10周年記念祭。著者陣としても、編集長も知らなかったような蔵出し製作秘話を書中登 ...